「110万円までなら贈与税はかからない?」
「1年間に110万円までは贈与税がかからない」と聞いたことがある方も多いと思います。これは「贈与税の基礎控除」というルールがあるからです。でも、「110万円以内なら何も気にしなくていい」と思っていると、あとで相続のときに思わぬ問題になることもあります。今回は、お金をもらっても税金がかからない仕組みや、気をつけたいポイント、相続時に困らないための対策を、わかり易き解説します。
贈与税ってどんな税金?
贈与税とは、家族や親せきなどからお金や財産をもらったときにかかる税金です。ただし、1年間に110万円までであれば、税金はかかりません。たとえば、母から1年で100万円もらった場合は、110万円以内なので贈与税はかかりません。でも130万円もらったら、110万円を超えた20万円に対して税金がかかることになります。この「110万円のルール」は、お金をもらった人ごとに適用されます。
たとえば、父から70万円、母から60万円をもらったら、合計130万円になり、やはり20万円が課税の対象になります。また、これは1月から12月の1年ごとに計算されるので、年をまたぐ贈与には注意が必要です。
「非課税なら手続きいらず」は大間違い
「税金がかからないなら何もしなくていい」と思っていませんか?
実はそれが一番の落とし穴。きちんと手続きをしておかないと、将来、相続のときに「これは本当に贈与だったのか?」と疑われることもあります。
●贈与契約書を作成しましょう
たとえ親子でも、「誰が・いつ・いくら・どうやって」お金をあげたのかを書いた書面があると安心です。簡単なメモでもOKですが、後で証明できるように残しておきましょう。
●お金は現金の手渡しより振込で
現金で渡すと、あとから証拠が残りません。できれば銀行振込でお金を渡し、通帳に記録を残しておくと安全です。
●もらったお金は自分で管理
通帳や印鑑を親が持っていたり、お金を自由に使えなかったりすると、贈与と認められないことがあります。受け取った人が、自分で管理することが大切です。
相続のときに困らないためのポイント
名義だけ子ども、実際は親が管理…これを「名義預金」と呼びます。子ども名義の通帳に毎月3万円ずつ入金していても、その通帳や印鑑を親が持っていたら、それは「名義預金」と呼ばれ、本当の贈与とはみなされません。税務署は、お金の流れや通帳の動きを細かく調べることがあります。もらった人がちゃんと管理していることが、とても重要となってきます。
「毎年ちょっとずつ渡す」場合も注意が必要
「毎年30万円ずつ贈与しているから大丈夫」と思っていても、税務署に「これは最初からまとめて渡すつもりだった」と判断されると、全体に贈与税がかかることもあります。これを防ぐためには、毎年きちんと贈与契約書を作る、毎年、金額や時期を少し変える、定期的に決まった額を何年も渡す形にしない、振込で証拠を残すといった工夫が効果的です。
最後に安心してお金をもらうために贈与税の基礎控除(110万円)はとても便利な制度ですが、正しく使わないとトラブルのもとになります。そして、贈与と相続は密接に関係しています。親が亡くなったときに「これは贈与ではなかった」と言われないよう、今からきちんと準備をしておくことが大切です。少し面倒に感じるかもしれませんが、将来の安心のためにはとても大事なことです。不安があるときは、税理士などの専門家に相談してみましょう。
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